学校生活ブログ

校長のひとり言12/8 読書環境の充実~読解力をつけるベースとなるもの~

2023年12月8日

一昨日、OECDが2022年に実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。調査対象者は世界の15歳69万人であった。その中で、「日本は読解力で3位となり過去最低の15位だった前回18年調査から回復した」と大きく報道された。文科省は「コロナ禍での休校期間が他国より短く学習機会を確保できたことも寄与した」と見解を述べたが、それだけだろうか?また、そんな順位の上下だけに一喜一憂するのでは大切な本質(子どもたちにどんな力を付けるのか、どんな子どもを育むのか)を見失ってしまう危惧を感じる。子どもたちが、本や資料、そして教科書を進んで「読んでみたい」と思える支援や環境づくりを、学校現場や地域で地道に取り組んでいることにもっと目を向けてほしいと願う。

さて、本校では、図書館教育がその大きな力となっている。昨日は、朝読書の時間、5名の読み聞かせボランティアさんが各教室に入り15分間の読み聞かせをしてくださった。絵本の内容は様々で、創作、民話、詩、学校、戦争など、各ボランティアさんが聞き手である生徒たちへの思いをもって選書されたものであった。中にはエピソードを交えて生徒たちに熱く自分の考えを語るボランティアさんもいらっしゃった。生徒たちの真剣に聞く姿が印象的だった。

また、週3日あるふだんの朝読書の時間では、必ず1クラスは図書館に行きその時間を過ごしている。そして、時間の最後には司書の伊藤あや先生からの本の紹介タイムがある。今日は、現在行っている図書委員会と給食センターとのコラボ企画である「本からとび出たごちそう」で、本日の給食献立となっている「肉うどん、たこあげ」が登場する作品『万葉恋ばな』(みずのまい著 学研プラス)を1年1組の生徒に紹介していた。

さらに、図書館前や廊下の一角は、そうした企画の展示や紹介コーナーで彩られている。生徒たちが自然とそれらのディスプレイの前で笑顔で会話をしている姿をよく見かける。人が望ましい行動をとれるようそっと後押しするアプローチのことを行動経済学ではナッジ(nudge)というそうだ。nudgeは英語で「ひじで小突く」「そっと押して動かす」の意味である。本校での図書館をはじめとするこうした取組は、おそらく生徒の本を主体的に読もうとする行動をそっと後押し(ナッジ)してくれているはずである。そして、こうした地道な取組こそ真の「読解力」を高めていくことにつながるはずである。