学校生活ブログ

令和5年度 卒業証書授与式 校長式辞 3/18

2024年3月19日

式 辞

先週の名残り雪の跡もほとんど消え、聞こえてくる小鳥のさえずりや、桜の蕾の膨らみに、確かな春の訪れを感じます。

このよき日に、多くのご来賓の皆様のご臨席を賜るとともに、卒業生保護者の皆様にご列席いただき、ここに令和五年度  伊那市立高遠中学校の卒業証書授与式を挙行できますことを心から感謝し厚く御礼申し上げます。

四十一名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今、こうしてこの時を迎えると、今までの「当たり前が幸せだった」と感じているのではないでしょうか。

先ほど、一人ひとりに手渡した卒業証書は、中学校三ケ年の 教育課程と、義務教育九カ年を立派に終えた証です。皆さんのこれまでの努力とともに、いつも皆さんを見守り、寄り添い、お支えくださった ご家族や地域の皆様のお陰であることを忘れないでください。

さて、皆さんは「ヒーロー」とはどんな人のことだと思いますか?

フランスの作家ロマン・ロランは、「ヒーローとは、自分のできることをする人。一方、凡人は、自分にできることをしないで、できもしないことばかりを望む人である。」と述べています。

一月二日に日航機が、海上保安庁の飛行機と滑走路上で衝突し、尊い五名の命が失われました。

その中で、 『日航機の乗客乗員379名が全員脱出できたことは「奇跡」だった』と世界中が報じました。

しかし、日航機の元同僚はその後のインタビューで、「あれは奇跡ではなく積み重ねの結果です。ふだんずっと訓練してきたことが生かせたんです。」と答えています。

炎による熱と煙が 機内に広がる中、客室乗務員たちは繰り返し大声で「冷静になるよう」呼びかけ、脱出可能な非常口を手探りで素早く見つけ、機長の指示を待たずに自身の判断で、乗客全員を避難させました。日ごろから、あらゆる状況を想定し繰り返し厳しい訓練を積んできたことが、この事故の中でも発揮されたのです。まさに、客室乗務員たちは「自分のできることをした」ヒーローだったと言えます。

しかし、ヒーローは、この客室常務員だけではありませんでした。自分の命の危険が迫る中でも、乗客全員の避難を見届けるまで機体を離れなかった機長たち、最悪の事態に備えて、立場や役割を超えて連携し対応した空港のスタッフや消防士たち、そして、客室乗務員の指示に従い、落ち着いて整然と避難した乗客たちもヒーローだったと言えるでしょう。

そう考えると、卒業生の皆さんも全員がヒーローです。なぜなら、中学校生活の中で「自分のできることをしっかりとしてきた」からです。

「飛躍~我らの翼で 我らの道を~」を生徒会スローガンに、皆さんは全校の先頭に立つというよりはむしろ、全校の声や姿が表に出るように、時には影となって活動に取り組んできました。

聖桜祭では「夢ボックス」に寄せられた会員の声を取り上げ、手作りの全校レク実現へと結びつけました。体育祭での一,二年生を精一杯応援する姿、大玉を運ぶシートが不平等でも、それを許し合い、勝っても負けても仲間同士たたえ合う姿に表れた、皆さんの温かさや優しさは、まさにヒーローそのものでした。

また、ヒーローはなかなか見えないところにもいました。図書館や給食、放送、花壇づくりなど、当番活動や係活動を誠実に行う姿、身なりを整え、床に膝をつけ清掃不言に励む姿、悩んだり休みがちな友達にそっと寄り添い声をかける姿、地域では、横断歩道で止まってくださった車に一礼する姿など、挙げればきりがありません。そして、その集大成が、先日あった惜別の会での皆さんの姿や振る舞いでした。一、二年生の発表を笑顔で真剣に聞き、大きな拍手で感謝を伝えたり、思いを込め、全力を出しきることの素晴らしさや美しさを、歌う姿で示してくれたヒーロー達の姿を、ここにいる後輩たちが必ず受け継いでいってくれるでしょう。

だから、卒業生の皆さん、「ヒーローであり続けて」ください! 

これからの世の中はますます、答えのない問いばかりが、皆さんを待ち受けていることでしょう。そんな時には、この中学三年間で仲間とともに学び成長したたくさんの体験と経験を力に、あなただけの「正解」を探し続けていってください。そんなヒーロー達の姿を期待しています。

保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。立派に成長されたお子様を前に、皆様の喜びもひとしおのことと存じます。お子様の、ますますのご健勝、そしてご活躍をお祈りするとともに、これまで私どもにお寄せいただきました、温かなご理解とご支援に、深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

結びに、卒業生をお支えいただきました全ての皆様に感謝を申し上げ、卒業生の皆さんの、前途洋々たる未来と、これからの人生に幸多からんことをお祈りし、私の式辞といたします。

令和六年三月十八日

伊那市立高遠中学校校長 田中 幸一