ICT Conference 2023 in INA
2024.03.07

令和5年11月1日(水)、ICT Conference 2023 in INAが開催されました。今回で12回目を迎えるICT Conference in INAは、伊那市内外の教育関係者が研究会や講演会などを通してICT活用教育について議論を深め、子どもたちのより深い学びを実現していくことを目的とした教員向けのイベントです。本イベントは事前の公開授業動画視聴、当日の授業研究会、および有識者後援会で構成されます。

公開授業

授業研究会の題材として、小学校と中学校それぞれ1クラスずつのICTを活用した授業の様子が公開・収録されました。

小学校

2年生の国語授業では、「お手紙」を題材にして、班ごとに作中の場面を劇にして動画撮影を行いました。登場人物の気持ちを考え、それを表現するための声の大きさや抑揚、姿勢や動き方などについて試行錯誤し、自分たちの撮影した動画を班員と共に見て、議論を重ねながら、納得のいくまで何度も撮り直しを行いました。さらに、タブレット端末を使いスクールタクト*1に授業のまとめや自己評価を書き込みました。

*1:schoolTakt、インターネット上で利用できる授業支援アプリ。意見共有や授業の振り返りなどに利用することができる。

中学校

1年生の国語授業では、「星の花が降る頃に」を題材にし、本文の印象的な表現が何を象徴しているかについて生徒に問いかけました。生徒たちはスクールタクトを使って、自分の考えを書き込みました。ICTを活用することで、生徒はリアルタイムでクラスメイトの意見を閲覧することができ、他者の意見に触れることで自分の考えをより深めることができました。また、考えがまとまらないときにチャット機能を使って先生と意見交換する生徒もいました。

公開授業研究会

参加者は当日までに撮影された動画を視聴し、学校ごとに意見を集約して授業研究会に臨みました。研究会は小学校と中学校の部門に分かれて行われ、ICT活用の必要性や可能性について議論されました。伊那市内の先生が一堂に会する貴重な機会として、事前に集約した意見を含めて活発な意見交換が行われました。授業の振り返りには動画やスクールタクトの利用が焦点となりました。

参加者の感想

・ICTと紙の扱いなど現代特有の課題に対する解決策を考えていきたい。
・提案性のある授業であり、クラウド上での交流を通して自分の意見をまとめるという完璧な授業だったと思う。
・先生の目に触れない場で行われた子どもの学習成果も認められるようになった。それらをふまえた授業研究の積み重ねが重要だと感じた。

講演会

今度珠美(いまどたまみ) 氏によるデジタル・シティズンシップに関する講演が行われました。

講演内容から一部抜粋

デジタル・シティズンシップとは、「デジタル技術の利用を通じて、社会に積極的に関与し、参加する能力のこと」と定義されています。GIGAスクール構想によって1人1台のタブレット端末が整備され、子供を取り巻くICT環境が大きく変化しました。ICTの安全な利用方法のみを学ぶのではなく、ICTを活用して学び、創造し、社会参加することができる「善き市民」を育成するためのメディア教育、市民教育、人権教育がデジタル・シティズンシップ教育です。
デジタル・シティズンシップ教育では、「ネット上に残り続ける可能性のある個人情報や管理する情報の未来にわたる影響を意識して行動する」「ネットを介したコミュニケーションでは、ネットという公共の倫理、作法を意識して行動する」など、インターネットを利用する上での行動の手順と方法を学びます。
オンラインではある行動に対してスピーディーに物事が動いていってしまいます。だからこそ、「行動する前に一旦立ち止まる」「今、何をすべきか考える」「信頼できる人に相談する」という3つのステップを踏むことが大切です。
また、家庭の中にインターネット機器を使わない時間と場所をつくり、子どもの年齢に合った機器の機能制限を設定します。家族の約束を明確にし、大人がモデルになるように振舞います。そして多様で健康的な体験の機会(身体的、感覚的、文化的)をつくります。

参加者の感想

・他の先生方と話し合いながら、ネットに投稿する人の気持ちになって考えることができた。制限するだけでなく、使いこなせるように授業で扱っていきたい。
・情報モラル教育は行っていたが、全く新しい授業展開の視点を知ることができた。関連書籍を読み、さらに勉強していきたい。
・日本ではまだ系統立てて論理的に実践されることの少ないデジタル・シティズンシップ教育について、分かりやすく教えていただきました。