校長挨拶

校長 登内 淳 (とのうち あつし) 

 一箇所に沢山の釘が打ち込まれたポニー馬の柵。途中で折れ曲がっている釘もいくつかある。そこには自分たちの力で何としても馬の力に負けない丈夫な柵を作ろうと1年生なりに精一杯取り組んだ跡が感じられる。休み時間に濡れながら黙々と水槽を磨き水を入れ替えている子どもたちがいる。「校長先生、ぼくたちが作ったベッコウ飴を食べてください。」と、目を輝かせ、誇らしげに語る2年生の子どもたちがいる。
  教諭として6年間勤めた伊那小学校に12年ぶりに戻ってきた。コロナ禍を経ても伊那小学校の総合学習・活動を中核に据えた子ども主体の教育活動が継続されていることを嬉しく思う。
私たちはコロナで予測困難な状況の難しい対応を経験した。世界情勢も不安定な中、少子高齢化にも拍車がかかり、子どもたちが生きる未来は益々予測困難な時代となりそうだ。課題や困難に対して、対応できる力を子どもたちに育みたい。過日「Forbes JAPAN」という月刊誌で教育に関するアワードがあり、30の教育機関が選出された。伊那小学校がその1つになった。本校は、次のように評価されている。「公立小学校にもかかわらず、長年にわたり、探究型のカリキュラムを実現している実績がある先駆者。長きに継続している学校の組織文化や地域との関係性を含め重要な点が多い。」今の時代に求められる学力が、本校が大事にしてきたものと重なってきている。
本校で勤務した職員が他の学校で同じように実践しようと試みるが、なかなかできずに苦労している。地域や保護者の理解や協力が、この教育を支える大きな要因であることは間違いない。
能動的な子ども観に立ち、子どもの内を探りながら、子どもと共に成長する教師でありたい。

2023年5月